本物の贅沢とは、何だろう。―無垢の木と大工の知恵がつくる、自然と暮らす住まい

先日ご紹介した、大工が伝統的な木組みの技でつくった「無垢材のベッド」が、ついに完成しました!
前回の記事では、釘やボルトに頼らず、木と木を組み合わせてつくるベッドの構造や、無垢材がもたらす心地よさについてご紹介しました。

しかし、完成したベッドを実際の住まいに置いてみると、ふと別のことを考えました。
「本当に大切なのは、ベッドだけではないのではないか」

ベッドが置かれているのは、無垢材の床。
その壁には、木と土を生かした日本の伝統的な住まいの考え方があります。

そして、部屋と部屋をつなぐのは引き戸。
そこには、単に「昔ながら」というだけではない、現代の暮らしにも通じる知恵がありました。

無垢材のベッドが置かれた自然素材の和の住空間
ベッドだけではなく、床、壁、建具まで。自然素材に囲まれた暮らしの一つのかたち。

眠る場所だけではなく、「暮らす場所」を考える

私たちは普段、家具を選ぶとき、
「デザインはどうか」
「使いやすいか」
「価格はいくらか」
ということを考えます。

ベッドなら、
「寝心地がいいか」
「マットレスは何を選ぶか」
ということが中心になるでしょう。

もちろん、それも大切です。

でも、一生の中で長い時間を過ごす「家」という空間そのものは、どうでしょうか。

床に触れる。
壁を見る。
空気を吸う。
木に触れる。
窓を開ける。
戸を開け閉めする。

私たちは、家の中にいる間、知らないうちにたくさんのものに触れています。

だからこそ、
「何でつくられた空間で暮らすのか」
ということも、生活の質を考えるうえで大切なのではないでしょうか。

無垢の床は、「見るもの」ではなく「暮らすもの」

今回のベッドを置いた部屋には、無垢材のフローリングが使われています。

無垢の木の床は、木目が美しい。

それだけではありません。

裸足で歩いたときの感触。
季節によって変わる木の表情。
時間が経つほど味わいが増していくこと。

工業製品のように「買ったときが完成」ではなく、
暮らしながら、少しずつ完成していく。
それが無垢材の面白さです。

また、木材には周囲の湿度に応じて水分を吸収・放出する「調湿作用」があります。

国土交通省が紹介する気候風土適応住宅の事例でも、無垢材や土壁などの自然素材を組み合わせ、
快適な室内環境を目指す住まいが紹介されています。

無垢材の木組みベッドと無垢フローリングのある和の寝室
無垢の木に囲まれた、自然素材の心地よさを感じる寝室。

木と土の壁がつくる、日本の住まい

日本は、四季があり、地域によっては夏に高温多湿になります。

そんな風土の中で、日本の住まいでは昔から、
木、土、紙、竹など、身近な自然素材
が使われてきました。

木摺りの下地に土を塗る。
木を現しにする。
風を通す。
湿気を逃がす。
日差しを調整する。

こうした方法は、単に「昔の工法」なのではありません。

現在でも国土交通省は「気候風土適応住宅」の考え方の中で、
土塗壁の調湿性や、通風・日射のコントロールなど、
地域の気候や風土に合わせた住まい方を紹介しています。

つまり、
昔の日本人が自然と向き合いながら培ってきた住まいの知恵は、今の時代にも考える価値がある。
ということです。

無垢材の木組みベッドを正面から見た完成写真
木の質感と大工の手仕事を感じられる、完成した無垢材のベッド。

「引き戸」という、日本の暮らしの知恵

もうひとつ、今回の空間で改めて感じるのが「引き戸」です。

扉を開けるためには、前後にスペースが必要です。
しかし、引き戸なら壁に沿って開閉できる。
限られた面積の中でも、空間を無駄なく使うことができます。

そして、引き戸の魅力はそれだけではありません。
閉めれば一つの部屋。
開ければ、隣の空間とつながる。

つまり、
「仕切ること」と「つなげること」を、一つの建具で切り替えられる。
これは、狭い日本の住まいにとって、とても合理的な考え方です。

国土交通省の気候風土適応住宅の事例でも、引戸によって空間に可変性を持たせたり、
風の通り道をつくったりする住まいが紹介されています。

「限られた空間を、どうすれば豊かに使えるか」。
そこにも、日本の住まいの知恵があります。

引き戸のある和の空間に置かれた無垢材の木組みベッド
空間を仕切ることも、つなげることもできる。日本の住まいに受け継がれてきた引き戸の知恵。

「木組み」という考え方は、ベッドにも生きている

そして、このベッドにも同じ思想があります。

木と木を組み、込み栓などを使って固定する。
必要になれば分解できる。
運ぶこともできる。
別の場所で、もう一度組み立てることもできる。

これは、前回の記事でもご紹介したこのベッドの大きな特徴です。

でも今回、完成した姿を見て改めて感じたのは、
「捨てることを前提にしていない」
ということでした。

壊れたら捨てる。
古くなったら買い替える。

それではなく、
直す。
組み替える。
場所を変える。
次の世代へ渡す。

大工の木組み技術で組み上げた無垢材ベッドの込み栓
釘やボルトだけに頼らず、木と木を組み合わせてつくる伝統的な木組み。

そんな考え方が、木組みにはあります。

「使い終わった後」まで考える

私たちは、物を買うとき、その物が自分の手元にある間のことは考えます。

でも、
「使い終わったら、どうなるのか?」
まで考えることは、意外と少ないのではないでしょうか。

木でつくることの大きな意味の一つは、素材の来た場所と、行き先を想像できることです。

山で育った木が、
原木になる。
製材される。
乾燥される。
家具や建築材になる。
そして長い時間、人の暮らしの中で使われる。

役目を終えた後も、状態や仕上げによっては、再利用したり、
木質資源(燃料)として活用したりすることができます。

国土交通省の伝統構法の事例でも、地域産材や自然素材を用い、
使用後の廃棄や環境負荷まで考慮した住まいづくりが紹介されています。

だからこそ、
「何でつくるか」だけでなく、「最後にどうなるか」まで考えてものを選ぶ。

それは、これからの時代にこそ必要な視点なのかもしれません。
※ただし、すべての木製品がそのまま自然に還るわけではありません。
塗料、接着剤、防腐処理など、使われている材料によって廃棄時の扱いは変わります。

だからこそ「自然素材でつくる」ということは、素材選びから考えることが大切です。

自然から離れるのではなく、自然とうまく暮らす

便利なものが増えた現代。
エアコンがあり、空気清浄機があり、照明があり、さまざまな機械が私たちの暮らしを支えてくれています。

それらを否定する必要はありません。
むしろ、便利なものは上手に使えばいい。

ただ、その一方で、
「機械だけに頼らず、建物や素材そのものが持っている力を生かす」
という考え方も、もう一度見直していいのではないでしょうか。

木を使う。
土を使う。
風を通す。
日差しを調整する。
引き戸で空間を変える。
無垢の床を歩く。
自然素材に囲まれて眠る。

これは、昔に戻ることではありません。
昔から受け継がれてきた知恵を、現代の暮らしに合わせてもう一度考えること。

それなのだと思います。

無垢材でつくられた大工の木組みベッドのヘッドボード
木の表情を生かし、大工の技で仕上げた無垢材のヘッドボード。

睡眠の質だけではなく、「生活の質」を考える

今回完成したのは、一台のベッドです。

でも、私たちが考えたいのは、ベッドだけのことではありません。

どんな場所で眠るのか。
どんな床を歩くのか。
どんな壁に囲まれて暮らすのか。
どんな素材に触れるのか。
そして、どんなものを次の世代に残していくのか。

そう考えていくと、
「睡眠の質」だけではなく、「生活の質」そのものを考えることにつながっていきます。

高価なものを買うことだけが、豊かな暮らしではない。
たくさんのものを所有することだけが、幸せでもない。

毎日使うものだからこそ、
触れたときに気持ちいい。
眺めたときに美しい。
長く使える。
壊れたら直せる。
そして、役目を終えた後のことまで考えられる。

そんなものに囲まれて暮らすこと。
それも、ひとつの豊かさではないでしょうか。

本物の贅沢とは、何だろう。

便利なものに囲まれること。
新しいものを次々に買うこと。
高価なものを所有すること。

それだけが「贅沢」なのでしょうか。
私たちは、少し違う答えもあると思っています。

山で育った木を使う。
大工が手をかける。
木の性質を生かしてつくる。
その土地の気候に合った住まい方をする。
直しながら、長く使う。
そして、使い終わった後のことまで考える。

自然を遠ざけることで快適にするのではなく、
自然とうまく付き合うことで、心地よく暮らす。

それは、昔の日本の住まいが教えてくれる知恵のひとつかもしれません。
今回の大工のベッドも、そんな暮らしの一部になってくれればと思います。

眠る場所を変える。

そして、
暮らしそのものを見つめ直す。
そんなきっかけになる一台です。

大工が無垢材で製作した木組みベッドの完成写真と、無垢材のベッドが置かれた自然素材の和の住空間
大工の手仕事によって完成した、無垢材の木組みベッドから、床、壁、建具まで。
自然素材に囲まれた暮らしの一つのかたちを考える。

山の木を、暮らしの中へ。

私たちMSコーポレーション/美山里山舎では、
山から生まれた木を、
原木のまま終わらせるのではなく、
製材し、乾燥し、建築材や家具など、
暮らしの中で長く使われる形へとつなげていくことを大切にしています。

木の価値は、原木の価格だけでは決まりません。

どんな木を、どこで、どのように製材し、何に使うのか。

その先にある「暮らし」まで考えることで、
一本の木が持つ価値は、もっと大きくなると私たちは考えています。

製材機の導入や、地域の木を活用した製品づくりについても、お気軽にご相談ください。

原木から製品生産が強い!美山里山舎が実践する山の百姓

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